土俵づくりと、共感のコミュニケーション

先日買った『オバマ現象のカラクリ』は2時間もあれば読めるものでしたが、
論旨が簡潔なのと、「オバマ現象」を例にしたことで非常にわかりやすかったです。


まとめてしまうと


「意識の多様化」は、二元論を前提とした旧来の「説得型コミュニケーション」を無効化した。いま、有効なコミュニケーションは「共感型コミュニケーション」であり、オバマとマケインの対決はこの二つのコミュニケーションのあり方の戦いでもあった
という一本の軸を論旨に据え、その「共感のコミュニケーション」を解説するという内容。


このコミュニケーションの戦略的な仕掛けとして、

  • 弱みを強みに変える土俵設定
  • 参画意識の醸成と支持者の囲い込み
  • コミュニケーション・レバレッジを効かせる

の3点が挙げられているのですが、スタートにある1点目は重要だとあらためて感じました。



事象を意味づける基礎となる基本メッセージをどれだけ早く打ち出し、有権者が共感できる自分の“土俵”(事象を意味づけるための文脈)を構築できるかで、選挙戦の勝負は決まる。世論の共感を得た自分の土俵をいち早く形成できれば、あとは相手をその土俵の上に乗せればよい。有権者の共感を得ているだけに、相手もその土俵で戦わざるを得ない(無視して独自のメッセージを出しても、振り向いてもらえない)。
オバマは、“Change”(変革が必要)という自分の土俵をいち早くつくることに成功した。この土俵の上では、クリントンやマケインが自らの経験や実績をアピールすればするほど、「従来の延長線上の過去のリーダー」という印象を与える。クリントンやマケインに比べれば、オバマは圧倒的に知名度が低く、実績はないに等しい。ところが“Change”という土俵の上では、「従来の延長線上にはない未知のリーダー」という新鮮で強い印象をもつイメージを与えることができるのだ。(pp.71-72)

土俵の設定はなにより重要で、なにより早いもの勝ちであることを心する必要がある。


さて、一方、終章で触れられることも、しばしば言われることながら納得。


喩えるなら、ブランディングは、企業が消費者の意識に色を塗る行為といえる。
しかし、今や企業は消費者から、そしてほかのステークホルダー(利害関係者)や世間から、レピュテーションによって色を塗られてしまう側に回った。実際のところ、ブランドよりもレピュテーションが企業の価値を決める時代になっているのである。(p.179)
そうした文脈で「レピュテーション・マネジメント」の重要性が語られます。


最新号の『広告批評』の特集も「オバマの広告力」。
「マスメディア広告万能の時代は終わった」という理由から次号で休刊する『広告批評』が
取り上げるテーマとしてバラク・オバマはまさしく適しているように思えます。