『絶対の宣伝』
以前から気になっていた本ですが、古本で買おうにも4巻揃いで3〜4万円するので、
中身を見てからと思い、会社でバイトしている学生に図書館で借りてきてもらいました。
草森紳一『絶対の宣伝』(1978〜79年、番町書房)はナチスのプロパガンダを扱った本。
元々、雑誌『宣伝会議』に連載を単行本化した書籍。
まずは一番興味のあった3巻『煽動の方法』(1979年)から読み始めています。
研究書というよりは同時代や後年の資料を集成してコメントを加えたようなものなので
分厚いものの読みやすいです。図版も多いですし。
『煽動の方法』の目次は下記の通り。
- 制服のデザイン――世間からはみだしたくないが、枠内では目立ちたい
- シンボル1 ハーケン・クロイツ(鉤十字)――性的に抑圧された気分を吸い上げる象徴
- シンボル2 勲章――肥満体の男ゲーリングの装飾衝動
- ヒットラーの演説――私に匹敵するものはない。ゲッベルスでも私には及ばない
- スローガン――空中に浮遊する大衆の理念の把握
- デマ1 流言蜚語の波――ソ連人が捕虜の舌を釘づけした
- デマ2 ヒットラー暗殺事件の場合――うわさは、われわれの日々の糧である(ゲッベルス)
- 選挙運動――ヒットラーは勝つ、国民が勝つことを願うが故に!
- 行進――恍惚の技術とその白痴化方式
- 新聞統制――血統および配偶者がアーリア系たること
- 焚書――炎よ、書物を呑め!
- 血と名誉――ローゼンベルクと神話
- 葬儀――私はロンメルが死んだことに感謝する(ゲッベルス)
- 負け戦さの煽動――真の宣伝は個人の意見の余地を十分に残しておく
つまり、これらを著者は「煽動」に必要な要素と考えているようですが、
これは有名なメリアム『政治権力』(1934年)の記述を思い出させました。
統治における象徴形式は、最近ではコミュニストやファシストといった新しく登場した集団によって、大規模で強い印象を与えるような形で展開されている。しかし、これほど組織的で目的意識的ではなかったとしても、それはこれまでもつねに利用されてきたものである。そうした象徴形式の諸類型の完全な目録をつくることは望むべくもないので、ここではそれらのうちのとくに重要なものに注意を払っておきたい。それらには次のようなものが含まれている。
- 記念日および記憶に残されるべき時代
- 公共の場所および記念碑的な道具立て
- 音楽と歌曲
- 旗・装飾品・彫像・制服などの芸術的デザイン
- 物語と歴史
- 念入りに仕組まれた儀式
- 更新・演説・音楽などをともなった大衆示威的行為
C.E.メリアム 『政治権力』
- 作者: C.E.メリアム,斎藤眞,有賀弘
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 1973/03
- メディア: 単行本
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