写美「文学の触覚」展

長いこと行きたいと思っていながらなかなか行けなかった展示が明日までということで、
駆け込みました。恵比寿の写真美術館で開催中の「文学の触覚」展。

開催の趣旨は以下の通り。


本展では、純文学と視覚芸術・メディアアートとの接点に焦点をあて、現代に活躍する文学作家とメディアアーティストのコラボレーションを行います。本来は読む人のイマジネーションにゆだねられる文学作品の世界を、多様なかたちで視覚化します。
展示を構成する3つのパート、(1)テキストを耳で聴く/目で見る、(2)小説の中に描かれた風景の再現、(3)古典作品へのオマージュ、について、講談社『群像』とNHKエンタープライズの企画協力を得て小説家とアーティストによる新作プロジェクトを制作し、関連事業としてトークや特集刊行を行います。
文学と映像メディアを独自の視点で結びつけ、その共存と、時には競い合う交差を通して、新たな領域と表現の可能性を開拓し探ろうという試みです。参加型の作品群に触れ、私たちの手のひらにこぼれる文学と映像メディアの美しさを体験してみましょう。

文字を読む、という行為はきっとこれからも変わらないだろうけれど、
ではどういう形で文字は読まれ、あるいは表現されるか、その可能性を探る展示です。


松浦寿輝平野啓一郎など、学生の頃からよく読んでいた小説家が参加していることも
事前の興味を高めていました。


平野啓一郎と慶応SFCの中西泰人准教授による「記憶の告白」は、
同タイトルの平野によるテキストが、バレーボール状の白い球体を振ることによって、
文字の大きさや文章の表記の方向が様々に変わってスクリーンに投射されるもの。
※写真はasahi.comの記事より。
いわゆる「ロマンティック三部作」(『日蝕』、『一月物語』、『葬送』)以降、
「追憶」(『高瀬川』所収)など、視覚性を取り入れた作品を模索しているので、
この「記憶の告白」も平野氏の作品の行き着く先としてとても自然でした。


最も興味深かったのは舞城王太郎とdivisualによる「タイプトレース道」。
これは作家のキータイピングをそのまま記録し、それを再現したもの。
そして再生する際には、作家が言葉を編み出すのにかかった時間によって、
スクリーン表示される単語の大きさが変化していて(時間がかかった語は大きく)、
文章の生成過程が生々しく伝わってきました。


参考展示でチームラボと書道家・大橋陽山氏のコラボレーションによるCG「然」も
出展されていて、これも非常に興味深かったです。
これまで文字を表現するメディアはもっぱら2次元だったところが、
3次元に移っていくとしたら、表現はどう変わるのか、
また文字自体も3次元化されていくのか、など思考の種がたくさんあります。


「文学の触覚」展
会場:東京都写真美術館 映像展示室(恵比寿)
会期:2007年12月15日〜2008年2月17日
主催:東京都、東京都写真美術館
支援:文化庁
企画協力:講談社「群像」、NHKエンタープライズ
協力:NTTサイバーソリューション研究所、NECディスプレイソリューションズ株式会社、工作舎

Webサイト:http://www.syabi.com/details/bungaku.html

関連リンク:
文化庁メディア芸術プラザ「One Step to Exhibition Vol.7 文学の触覚」
書道家 大橋陽山Blog『瞬感』「『文学の触覚』展 所感」(『然』について)
エキサイトイズム「現代文学作家とメディアアーティストのコラボ『文学の触覚』展」

群像 2008年 01月号 [雑誌]

群像 2008年 01月号 [雑誌]

高瀬川

高瀬川