TransportationとCommunication
土曜日の昼間、一気に本を10冊ばかり大人買いしたのですが、
土日の両日とも仕事でなかなか読書できず、ただ全く読まないのもいやなので、
この時間まで入浴しながら読書して、一冊読み終えました。
読んでいたの集英社新書の新刊『ハプスブルク帝国の情報メディア革命』。
帯にあった「あらゆるメディアは、近代初期郵便網に遡る」というコピーに
コロッとやらたというのもないではないのですが、
もともと「トランスポーテーション(輸送・物流)とコミュニケーション」
というテーマには興味を持っていたので買った本です。
先に言ってしまうと、あまり私の興味を強く惹く内容ではありませんでした。
かなり近代郵便史の概説といった内容で、
コミュニケーション論的な観点は、そうした本の性質上、少なかったように思います。
ただ、気になったというよりは改めて納得した点もあったので、ヌキガキしておきます。
つまりコミュニケーション、すなわち、情報の分布とその内容の通知は、蓄積メディアとは別の伝達メディアによって行われるということだ。そして伝達メディアが変革され近代郵便となり、今までの時間と空間の座標軸を動かしたということが、十六世紀ヨーロッパの社会変革であったのだ。
「配置するという動詞から派生したイタリア語のポスタ(郵便)という概念はまず宿駅を固定することで空間を分配することを意味している」(ベーリンガー『トゥルン・ウント・タクシス』)。これによりまず空間が克服され、次に時間が克服され、我々の生活原理に速度観念が入り込んできたというわけである。人々はこの新しいメディアに群がり、そして同時に縛りつけられることになった。
ここで言われている、新たなメディアによって社会に変革が起きる、ということは
大枠では認められるのですが、著者はメディアを一緒くたにしてしまっているきらいがあります。
つまり「蓄積メディア」と「伝達メディア」を同じ「メディア」という列に並べているのですが、
後者は本書中では、内容的に制度やシステムとして捉えた方がよいように思います。
引用部では、なにもグーテンベルクによる活版印刷(で生まれる書物=蓄積メディア)だけが
パラダイムシフトを起こした要因なのではなく、人々に伝達した手段もそれを手伝った、と
著者は述べたいわけですが、ちょっと舌足らずな気がしました。内容はわからなくはないけど。
他では、別の箇所で、ヨーロッパにおける新聞の誕生が郵便のうえに成立していたことや、
すでにドイツ三十年戦争の際に、新聞を使った世論形成が行われていたということを知り、
それってもっと時代が下っての話だろうと思っていたので、びっくりしました。
ハプスブルク帝国の情報メディア革命―近代郵便制度の誕生 (集英社新書)
- 作者: 菊池良生
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/01/17
- メディア: 新書
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