「トランプ暦」

ソフィーの世界』の著者として有名なノルウェーの作家ヨースタイン・ゴルデル

それに先立つ哲学的ファンタジー小説から「空想の産物」。

まだ来年のカレンダーを用意してない人には、こういうのもいいかも知れません。

「空想」といってもトランプを使えばできることなんですが。


「あのころ、わしはトランプ暦のことを考えるようになっていた。(略)トランプはこの島で、暦として、とても役に立つことになったんだ」

「カレンダー?」

「そうだ。一年は五十二週だ。トランプ一枚を一週間とする」

おれは計算を始めた。

「七かける五十二は、三百六十四」

「その通り、だが、一年は三百六十五日だ。一日あまる。その日をジョーカーの日とするんだ。ジョーカーはどの月にも入らない。あまりの日。その日には、何が起こるかわからない。四年に一度は、ジョーカーの日が二日あることになる」

「すごい!」

「五十二週間、これをわしは五十二枚のカードと呼んでいるのだが、これを、十三ヶ月に分ける。どの月も二十八日だ。十三かける二十八は三百六十四。最初の月はエースの月。最後の月はキングの月。四年に一度ジョーカーの日が二日ある。こんなふうに、どのカードも、一週間を示し、さらにひと月を示すことになる」

フローデはさっとこっちを見た。すばらしいカレンダーを自慢しているようでもあり、照れているようでもあった。

「ちょっと難しいけど、すごい!」

フローデはうなずいて言った。

「頭を使っていたかったんだよ。一年はさらに四つの季節に分けられる。つまり、ダイヤは春、クラブは夏、ハートは秋、スペードは冬だ。一年は春から始まる。年の初めの週は、ダイヤのエースとなる。夏はクラブのエースから始まり、秋はハートのエースから始まる。冬はスペードのエースからだ。一年の最後の週はスペードのキングとなる」

「今、どの週なんです?」

「機能がスペードのキングの週の最後の日だった。そして、四年に一度めぐってくるスペードのキングの月の、最後の日でもあった」

「そうすると今日は……」

「ジョーカーの日だ。二日続くジョーカーの日の一日目だ」


ヨースタイン・ゴルデルカードミステリー』(1990年)より


カードミステリー―失われた魔法の島

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