MySpace、ラジオ・雑誌と提携

今朝の日経新聞朝刊の1面中程の記事より。


交流サイト「SNS」世界大手 ラジオ・雑誌と提携――マイスペース、メディア複合 日本市場をテコ入れ
インターネット交流サイト(SNS)世界大手のマイスペースはラジオや雑誌と提携する。4月からネットと連動したラジオ番組を放送したり、共同で雑誌を発行したりして認知度を高める。2006年に日本に参入してから会員獲得で苦戦しており、複数メディアと連携する「クロスメディア戦略」で国内最大手ミクシィを追撃する。
FM局のJ-WAVEと組んで4月から新番組を始める。マイスペースのサイト上で音楽を発信している9万組超のアーティストを対象に、自作の楽曲を放送する機会を提供する。「TVガイド」などを発行する東京ニュース通信社(東京・中央)とは5月に新雑誌を立ち上げる。音楽や映像制作、デザインなどの分野で活躍する会員の活動を紹介する。
ネットとラジオ、雑誌で連携した企画を展開することで、相互に利用者を増やす。
ニューズ・コーポレーション傘下のマイスペースは世界で約1億2,000万人が加入するトップ規模のSNSサイトだが、日本の加入者数はミクシィの約1,570万人の3割程度とみられる。さらに日本のSNS登録者数は10年以降、伸びが鈍化するとの予測もある。一段の競争激化が予想されるなか、ネット業界で複数メディアと連携する動きが広がりそうだ。


日本経済新聞, 2009年1月25日 朝刊.

MySpaceはインディーズを含めて多くのアーティストを会員として抱えているので、
彼らの活動状況情報の出し先としてラジオや雑誌を使う、ということですね。


ただ、あまりそれが「会員獲得で苦戦」している状況の打開策として適しているとは思えません。
というのも、すでにmixiに入っているような一般的な人たちに、
MySpaceがどういう価値を提供してくれるのかが不明確な気がするからです。


私個人としては、MySpaceの印象は、
確かにたくさんのアーティストがアカウントを開設していることは強みかもしれませんが、
洋邦問わず知らない(特にインディーズ)アーティストから
「フレンドに追加してほしい」といった内容のメールをたくさん受け取ることになり、
あれに辟易してしまったなあといった感じです。


たぶんそれはSNSというパーソナルな場において、
あまりに「プッシュ型」なコミュニケーションを取られることへの抵抗感なのだと思います。


今回のFMや雑誌との企画も、アーティスト会員の活動PRといったことなので、
特にMySpaceを絡ませずとも人びとは情報を得られるのではないか、と考えると、
あまり会員を伸ばせるイメージがありません。


いま重要なのは「どういう会員」を取って、「どういう価値」を提供するか、です。


以前、別のブログに書いたことを一部転載。


SNSというのはその性質上、他のサービスを圧倒するユーザーを多く集めると、コミュニケーションの単なる「ツール」ではなく「インフラストラクチャー」と化します。
言語的に特殊な事情のある日本では海外サービスの参入障壁もあったせいもあり、mixiというドメスティックなSNSが早くからデファクトスタンダードとなり、コミュニケーションの「インフラ」となっているわけです。
(略)
では、「mixiひとり勝ち」という状況は他のサービスがことごとく負けに等しいかというと、そうではないと私は思います。
Orkutのユーザーあたりの総滞在時間が非常に長いことにも現れているように、全体規模は到底mixiに及ばずとも、そこでは非常に密なコミュニケーションが行われていると考えられるからです。
私は、いままで「SNS」として一緒くたにされていた諸サービスは、いまやコミュニケーションの土台として普遍化した「インフラストラクチャーと、密度の濃い、あるいは特化型のコミュニケーションを図る「ツール」というふうに審級が分かれたのではないかと思っています。
さてこうしたとき、両者には自ずと今後とるべき戦略が決まってくることでしょう。「インフラストラクチャー」側はその規模を活かしオープン化を図るべきであり、「ツール」はその独自の利便性を伸ばすべきです。
もちろん前者であるmixiはオープン化戦略をとることが大事で、その一方、後者ではGreeならばモバイルに注力、Facebookなら海外の友人とのやりとりに特化、といったように。
これは、あるいは東大情報学環水越伸先生が言っている「メディア・ビオトープ」の考え方に近いかもしれません。
全体として相補性をもって、各メディアがつながりあい(共生し)、コミュニケーションスペースが構築されることは、ユーザーにもメリットが大きいと思います。

もはやmixiがあれだけ多くの会員数を集め、招待制から登録制に移行しました。
すでに若年層の大半がmixiに加入している、ということを前提としたときに、
じゃあ2つめ、3つめのサービスとしてMySpaceに登録することで得られる「価値」は何なのか。


それを考える必要があると思います。


関連エントリ:「アクティブユーザー数でFacebookはもはや『大国』」(2009年1月10日)
         「日本市場でのSNSサイト調査(comScore調べ)」(2008年8月10日)
Link:Media Marketing Times