「センセイ」と、「バズ」と、「大きな物語」の不在と、その他もろもろ。

昨日12/12付の日経MJ紙の一面は「『センセイ』をつかまえろ」と題した記事でした。


景気後退で商品の売れ行きが鈍るなか、幼稚園や病院の「センセイ」を通じて商品やブランドを売り込むマーケティング手法が広がってきた。節約志向で買い物に失敗したくない消費者は判断に迷い、身近な権威にすがる傾向が強まっている。狙った消費者を確実に狙い撃ちできる手法として、企業と先生を仲介するビジネスも盛り上がっている。


日経MJ, 2008年12月12日.

例として

などを挙げて、幼稚園の先生や医師を媒介とした情報伝達を
最近のマーケティング手法として紹介しています。
キーワードは記事中にも出てくる「身近な権威」ですね。


これはもちろん「パワーブロガー」を用いた販促と同じです。
それぞれの分野での「専門家」の言葉を利用したマーケティングです。


こうしたマーケティング手法の流行を、単に

  • マスマーケティングが効かなくなってきたという背景
  • 「一億総専門家(評論家)」化

などで説明することは簡単ですが、とはいえ、
結局のところマスマーケティングも(よくある)バズマーケティング
トップダウンの情報投下モデルというところで同じであって、
その「情報投下の入り口」と「裾野の広がり」とが違うだけです。


マスマーケティングという「大きな物語」が失効したのち、
個々のコミュニティ、クラウドに分かれた「分衆」(古い言葉ですね)に対して
いかに情報を伝えるかという「ポストモダン」的な問題でもあるのですが、
そこで生まれている手法は小さな「マスマーケティング」という印象が否めません。


そうではなく、新たなコミュニケーションの方法はないかと模索した結果の一つが
ちょうど一年ほど前に電通が「2008年の消費キーワード」として挙げた
「ネタ共振消費」だったりしたのだと思うのですが、
結局のところいわゆる「バイラルマーケティング」は
「ネタ」を作っていかに効率的に投下するかといったものになってしまい、
おもしろいネタ(コンテンツ)を作り、ブロガーネットワークを活用する、という
パッケージに収斂されてきてしまっています。


こうしたパッケージは(そして「センセイマーケティング」も)
中期的に見たら通用しなくなっていくだろうなあ、という感じがします。


では、「ポストモダン」的マーケティングはどこに生まれるのか、というと
たとえばコダ氏のいうような「コンテクスト」とかはそうだと思うのですが、
もっともっとこの部分を考えていく必要がありますね。


もうすぐ今年も終わることですし。