TransportationとCommunication (再)

業務の忙しさと、仕事用のブログの記事更新ばかりで、
こちらのブログの記事は更新がしばらく滞ってしまっていました。


さて、学生時代に『ミカドの肖像』を読んで以来、
その続編と位置づけられる『土地の神話』は手元には置いてあったものの
まったく手付かずで未読のままだったのですが、
五月の連休後、実家から送ってもらい、ここ数日読み進めています。


この著作は、東急電鉄グループの成長と田園調布の都市開発を読み解くことで
日本の近代史、特に著者の関心に引きつけて官僚機構や産業史を語るもの。
前作の『ミカドの肖像』において
西武グループプリンスホテルを起点に論じたもののアナザー・ヴァージョンで、
そう考えると続編というよりは姉妹編と呼んだ方がより正確かも知れません。


読み進めているうち、改めて阪急の創業者・小林一三の偉大さを思い知りました。


市民に鉄道を使わせるために、沿線を開発し、
ターミナル(梅田)にはデパートを、終点(宝塚)にはレジャー施設を作った小林。
学生時代の一時期、「宝塚歌劇」について著作のある教官についていたため、
小林一三の事業思想には触れていたものの、改めてこの発想はすごいと思います。


同時に、これも学生時代の頃から感じているのですが、
これは交通事業ばかりでなく、インフラ事業全体に適用が可能なロジックです。
新たなインフラを使ってもらうために、そこに魅力的なコンテンツを生み出す。
放送も然り、インターネットメディアも然り。


『土地の神話』では、明治以降の鉄道行政についても不可避的に触れているのですが、
大正9年1920年)の鉄道省設置以前に鉄道を管轄していた役所・鉄道院が、
一時期逓信省の下にあったという事実(鉄道庁 1892〜93、逓信省鉄道局 93〜97)は
非常に示唆的だと思いました。


TransportationとCommunication。
両者は運ぶモノによって分けられることが多いですが、本質的には同義です。



関連エントリ:「TransportationとCommunication」(2008.2.3)


日本の近代 猪瀬直樹著作集6 土地の神話 (第6巻)

日本の近代 猪瀬直樹著作集6 土地の神話 (第6巻)