国内時計会社のプレミアム戦略

都内のJRの駅内でセイコーの「グランドセイコー」の広告が目立っています。
例年だと女性向けの「ルキア」の広告がこの時期は多かった気がしますし、
今年はクリスマス需要を見込んでルキアは初めてペアのラインも出していますが、
それよりも今年は「グランドセイコー」が打ち出されているようです。


これは国内時計メーカーの中高価格帯に注力する戦略とも連動しているようです。



国内腕時計の二大メーカーが新たなブランド戦略を相次ぎ打ち出した。「セイコー」と「シチズン」。それぞれの社名をブランドとして打ち出し、アピールする手法だ。従来はシリーズごとのブランド展開が主流だった腕時計業界。ここへ来てなぜ、社名をあえてブランド名とするのか。

(略)

背景にあるのはスイスメーカーの高級機械式腕時計の国内市場での台頭だ。2007年度の国内腕時計の売上高は推計で約6,300億円。前年度に比べてマイナス2%の成長率でほぼ頭打ちだ。中でも問題なのは、国産品の存在感が低下していることにある。

セイコーウオッチの推計によると、03年には24%あった国産品の販売額シェアは07年は20%まで減少。逆にスイス製品は66%から70%まで上昇した。国産品の減少分が、スイス製品に回った格好だ。

実際「国産メーカーはブランド価値の強いスイスメーカーに太刀打ちできていない」(東京都内の百貨店腕時計バイヤー)との声も聞こえる。

(略)

同社(註:セイコーウオッチ)は今後、東京、名古屋、大阪などを中心に三年間で30店舗の展開を計画する。シチズンも今回発表した男性用腕時計(註:「CITIZEN Series 8」)以外に、「CITIZEN」の冠を施した女性用腕時計の新シリーズ展開を視野に入れ、ブランドの定着を狙う。


日本経済新聞、2008年10月16日朝刊


こうしたなかで、各社ともプロダクトと販売チャネルとを整備しはじめています。



セイコーウオッチ(東京・港)の男性向け腕時計「セイコーブライツフェニックス」の販売が好調だ。開発に着手した2006年ごろはユーロ高が進行、需要の多い20万―30万円前後の価格帯が空洞化しつつあった。そこに商機を見いだした。最近のユーロ安や景気後退の影響は被っておらず、20―30代男性の関心は高いという。

(略)

ブライツ」は00年に発売したブランドで、価格帯は10万円前後。団塊世代を中心に休日のおしゃれを楽しむ使い方を想定してデザインした。これより上位の価格帯のシリーズを投入することにしたのは、人気が高い輸入時計の価格帯がユーロ高や原材料高、ブランド戦略などにより、30万円前後を超えて上昇したからだ。

「売りやすい価格帯の商品がなくなった」という販売店からの声にも押され、開発に乗り出した。「当時、10万円台から30万円前後の市場は800億円ほどあったとみられ、競合が減ったのはチャンスと思った」という。

とはいえ、輸入品偏重の強い時計業界で、国産の高級時計を出しても売れるとは限らない。同社は自社最先端の機構をフェニックスに優先的に搭載し、「通常は40万―50万円するものを、価格も等身大に下げてコストパフォーマンスを圧倒的によくした」。その結果、4―9月は「ブライツ」全体の売り上げは前年の2.8倍と急伸した。


日経MJ、2008年11月21日


シチズンは前掲の記事にもあるように「CITIZEN Series 8」といったプロダクトを
送り出しつつ、中高価格帯向けの販売チャネルを作り始めています。



シチズン時計は高級時計販売の日新堂(東京・中央)と共同出資で腕時計の販売会社を設立した。シチズン製を含む、国内外の高級腕時計専門店を全国で展開する。28日、東京・銀座に第一号店を開いた。シチズン時計は価格帯が15万円以上の高級腕時計の販売を強化している。専門店事業に参入することで、自社の高級腕時計の販売増につなげる。

(略)

銀座店ではスイス製高級腕時計ブランド「ロレックス」とシチズンの高級ブランド「シチズン シリーズ8」「カリディア」「カンパノラ」の三ブランドを展開する。それぞれ国内最大規模の商品数をそろえた。シチズンと日新堂で共同開発した腕時計など、共同出資会社が展開する店舗だけで購入可能な限定製品も販売する。


日本経済新聞、2008年11月29日朝刊


折りしも円高傾向が強まっていて、
エコノミストのなかにはこの円高は持続性があるという人も多く、
欧州の時計に分がある状況ですが、国内時計会社がどう戦うのか注目です。